まだあなたを愛してる〜離縁を望まれ家を出たはずなのに追いかけてきた夫がめちゃめちゃ溺愛してきます〜

18またはじめから

 ――翌朝。

「エマ、ギル、ありがとうございました」
「ローラ、いつでもここへ帰って来てね」

 目に涙を浮かべたエマは「寂しくなるわ」と言いギュッと私を抱きしめた。
 私もエマの背に腕を回し抱きしめる。

 ――たった五日一緒にいただけ。それに二度と会えなくなるわけじゃない。
 ここへ来ればいつでも会えると分かっていながら、それでもエマの涙につられるように私は泣いてしまった。

「はい……必ずまた来ます」
「約束よ」

 エマは涙を拭うと「ありがとう」と言いながら杖を振り、私とジェイド、馬のステラを山道へと転移させた。

 そこは、私が幌馬車を降りた小道のようだった。けれど、小道の両側は高い木々が生え、その間を埋めるように背の高い草が生い茂っている。あったはずのエマ達の家へと続くけもの道はどこにも見当たらない。

 見失ってしまった道を探している私に、ジェイドは優しく声を掛けた。

「今は見えなくても、きっとまたここを訪れた時に道は現れる。ローラ、行こう」
「はい」

 私達はステラに乗り、ゆっくりと家路についた。
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