まだあなたを愛してる〜離縁を望まれ家を出たはずなのに追いかけてきた夫がめちゃめちゃ溺愛してきます〜
翌日、私達が家に帰ってきたことを知ったレイズ侯爵夫妻が慌てた様子で訪れてきた。
二人は私の顔を見るなり「悪かった」と謝り、目を伏せた。
「私達はどうかしていた。孫の瞳が新緑でなかったことでこれまで以上に魔力の事ばかり考えてしまったのだ」
「そうなの、それにクリスタがジェイドと結婚したいと言い出して、自分なら必ず魔力持ちの子供を生めると言うものだから」
離縁を告げに来たあの日とは違い、とても優しい目で私を見るレイズ侯爵夫妻。
そんな二人に、ジェイドは訝し気な顔をして見せる。
「そんな言葉でローラにした事を許せと言うのか?」
声を低くするジェイドに、レイズ侯爵夫人は慌てて弁明をはじめた。
「いいえ、許してもらおうなんて思っていないわ。ただ、私達がしてしまった事を謝りたいのよ。言ってしまった事はなかった事には出来ないし、修道院へ送った事も事実だもの。ローラさん、本当にごめんなさいね」
「もう遅い。俺はレイズの名を捨てるつもりでいる」
ジェイドは夫妻に向け冷たく言い放った。
「どうして?!」
侯爵夫妻はひどく驚いた顔をしてジェイドを見る。
「俺はすでに家を出ている。それに魔力もない俺がレイズの名をもらう理由はない。その名があるからあなた達は俺をまだ自分たちの物だと思っているんだろう? だから当たり前のように俺に離縁をしろと言ったんだ。クリスタも、レイズの名を持たぬ男とは結婚など考えない」
いつもは優しい新緑の瞳が鋭く父親であるレイズ侯爵へと向けられる。
レイズ侯爵は眉の皺を深くし、声を低くした。
「……好きにしろ。だがなジェイド、どんなに書面で家名を捨てようとも、魔力持ちだけが持つ新緑の瞳である限り、お前にレイズの名はついてくる」
尖りのある話し方をしたレイズ侯爵の袖を夫人は引いて小さく首を横に振った。
なぜかレイズ侯爵は、今し方言ってしまった事を後悔するかのような顔になる。
「ジェイド、あなたがクリスタの事でそう考えているのなら、私達があの子には言い聞かせるから大丈夫よ」
レイズ侯爵夫人は目を弓の様にした。
「そうじゃない、俺は」
ジェイドが言いかけた言葉を遮るように、お義母様は私に話しかけられる。
「ローラさん、ここへ二人で帰ってきたという事は、これまで通りジェイドと一緒にいてくれるのよね?」
甘ったるい言い方をされたお義母様は、私の下へ歩み寄り手を握った。
思っていたよりひんやりとした骨ばった手に少し驚いてしまい、ピクリと体を震わせる。
「これからもレイズ家のお嫁さんでいてくれるのよね?」
食い入るように私を見つめるお義母様の新緑の瞳に、また言葉を失いそうになった。
ジェイドが心配そうな顔をして私を見ている。
――大丈夫。
今度はちゃんと自分の気持ちを伝えられる。
「私には……。私にはアーソイルの加護の力はありません。彼の子供を授かる事が出来るのかも分かりません。ですが、この先もずっとジェイドの傍にいたいです。彼の妻でいたいのです」
私の言葉にお義母様は嬉しそうに顔を綻ばせた。
「もちろんよ!」
ニッコリと笑ったお義母様は、私の手に結婚指輪とネックレスの『鎖』を返した。
「実は……」と声を落とし、ネックレスについていた石を売ってしまったのだと謝られた。「それでね、代わりと言っては何だけれど」と、似たような緑色の石を渡された。
ジェイドにもらった緑色の石は残念だけれど、すでに売られてしまったのなら仕方がない。あの石は私とジェイドの仲を守る、という願いを叶えてくれたのだと思う事にして諦めた。
売ったと聞いたジェイドはとても怒っていたが、石はそれほど高いものではなかったのに、それを売るほど困窮していたのかと肩を落とした。
その後、レイズ侯爵夫妻はこの家から運び出した家具は侯爵邸にあるからといい、いつの間にか雇い入れていた使用人を使い運び入れてくれた。
二人は私の顔を見るなり「悪かった」と謝り、目を伏せた。
「私達はどうかしていた。孫の瞳が新緑でなかったことでこれまで以上に魔力の事ばかり考えてしまったのだ」
「そうなの、それにクリスタがジェイドと結婚したいと言い出して、自分なら必ず魔力持ちの子供を生めると言うものだから」
離縁を告げに来たあの日とは違い、とても優しい目で私を見るレイズ侯爵夫妻。
そんな二人に、ジェイドは訝し気な顔をして見せる。
「そんな言葉でローラにした事を許せと言うのか?」
声を低くするジェイドに、レイズ侯爵夫人は慌てて弁明をはじめた。
「いいえ、許してもらおうなんて思っていないわ。ただ、私達がしてしまった事を謝りたいのよ。言ってしまった事はなかった事には出来ないし、修道院へ送った事も事実だもの。ローラさん、本当にごめんなさいね」
「もう遅い。俺はレイズの名を捨てるつもりでいる」
ジェイドは夫妻に向け冷たく言い放った。
「どうして?!」
侯爵夫妻はひどく驚いた顔をしてジェイドを見る。
「俺はすでに家を出ている。それに魔力もない俺がレイズの名をもらう理由はない。その名があるからあなた達は俺をまだ自分たちの物だと思っているんだろう? だから当たり前のように俺に離縁をしろと言ったんだ。クリスタも、レイズの名を持たぬ男とは結婚など考えない」
いつもは優しい新緑の瞳が鋭く父親であるレイズ侯爵へと向けられる。
レイズ侯爵は眉の皺を深くし、声を低くした。
「……好きにしろ。だがなジェイド、どんなに書面で家名を捨てようとも、魔力持ちだけが持つ新緑の瞳である限り、お前にレイズの名はついてくる」
尖りのある話し方をしたレイズ侯爵の袖を夫人は引いて小さく首を横に振った。
なぜかレイズ侯爵は、今し方言ってしまった事を後悔するかのような顔になる。
「ジェイド、あなたがクリスタの事でそう考えているのなら、私達があの子には言い聞かせるから大丈夫よ」
レイズ侯爵夫人は目を弓の様にした。
「そうじゃない、俺は」
ジェイドが言いかけた言葉を遮るように、お義母様は私に話しかけられる。
「ローラさん、ここへ二人で帰ってきたという事は、これまで通りジェイドと一緒にいてくれるのよね?」
甘ったるい言い方をされたお義母様は、私の下へ歩み寄り手を握った。
思っていたよりひんやりとした骨ばった手に少し驚いてしまい、ピクリと体を震わせる。
「これからもレイズ家のお嫁さんでいてくれるのよね?」
食い入るように私を見つめるお義母様の新緑の瞳に、また言葉を失いそうになった。
ジェイドが心配そうな顔をして私を見ている。
――大丈夫。
今度はちゃんと自分の気持ちを伝えられる。
「私には……。私にはアーソイルの加護の力はありません。彼の子供を授かる事が出来るのかも分かりません。ですが、この先もずっとジェイドの傍にいたいです。彼の妻でいたいのです」
私の言葉にお義母様は嬉しそうに顔を綻ばせた。
「もちろんよ!」
ニッコリと笑ったお義母様は、私の手に結婚指輪とネックレスの『鎖』を返した。
「実は……」と声を落とし、ネックレスについていた石を売ってしまったのだと謝られた。「それでね、代わりと言っては何だけれど」と、似たような緑色の石を渡された。
ジェイドにもらった緑色の石は残念だけれど、すでに売られてしまったのなら仕方がない。あの石は私とジェイドの仲を守る、という願いを叶えてくれたのだと思う事にして諦めた。
売ったと聞いたジェイドはとても怒っていたが、石はそれほど高いものではなかったのに、それを売るほど困窮していたのかと肩を落とした。
その後、レイズ侯爵夫妻はこの家から運び出した家具は侯爵邸にあるからといい、いつの間にか雇い入れていた使用人を使い運び入れてくれた。