まだあなたを愛してる〜離縁を望まれ家を出たはずなのに追いかけてきた夫がめちゃめちゃ溺愛してきます〜
 その日から、私は彼に気づかれないように荷物を片付け始めた。

 ジェイドは結婚する前もしてからも沢山の贈り物をしてくれていたが、彼からの贈り物は一切持って行く事は出来ないと言われていた為、私はその一つ一つを大切に箱に仕舞って納戸の奥に置いた。

 持って行く鞄は部屋の衣装タンスの奥に隠して。
 そうして何事もなかった様に彼の前で過ごして来た。
 体にいいと言うお茶も、変わらず夕食時に飲み続けた。

 夫もまた、私の前ではこれまでと何も変わらなかった。
 相手がいる事など微塵も感じさせない。

 これまで同様に私達は一緒に食事をとり、同じベッドで眠った。
 変わらず彼は三日おきに私を求めてくる。
 しかしこの行為は、愛ではない。

 ――そう分かっていながら、彼の温もりに喜びを感じてしまう私は愚かなのだろう。


 ただ、
「今日は侯爵邸に寄ってくる、少し遅くなるから」
 彼がそう口にする度、以前は何も思わなかったのに胸の奥がざわざわとした。
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