まだあなたを愛してる〜離縁を望まれ家を出たはずなのに追いかけてきた夫がめちゃめちゃ溺愛してきます〜
「まぁ、そんな事はどうでもよい。どちらにせよ、加護の力が現れたお前はここにいるしかないのだから」

 ここにいるしかない?

「どうして……」

「アーソイル公爵家の娘であっても、加護なしのお前の存在を知る者は少ない。そのうえ結婚を期に我々からも切り捨てられている。それに、力を失ったレイズ侯爵と結婚をしたような女だ。誰も関心を持つことはなかった。それが証拠に何一つ危険な事はなかっただろう?」
「危険な事……」
「だが、加護の力が現れたお前は、これから力を欲する者達から狙われる存在となる」

「そんな事、私の力の事はジェイド以外誰も知らなかったのに……」

「そう言った事は世に知れ渡るものだ。現に私やレイズ侯爵にも知られていたではないか? それにあのアクアトスの娘も知っている」

「クリスタ様も……」

 クリスタ様も知っているという事は、アクアトス公爵も知っているかも知れない。
 もしかしたら他の公爵達にも知れ渡っているのかも……。

 そう思うと不安になってくる。
 そんな私の表情を見ていた公爵は声を潜めた。

「お前の夫であるジェイド・レイズが魔力持ちであったなら、危険からその身を守ることも出来ただろう。だが、今の奴には何も出来ん。騎士とはいえ下手をすればあの男の命すら危ぶまれる。お前はあの男を愛しているのだろう? その気持ちが偽りでないのなら彼の事を考え離縁をしここへ戻るべきではないか?」

 私の所為でジェイドまで命を狙われるの……?

「ここならお前を守ってやることが出来る」とアーソイル公爵は口角を上げた。

 ――守る……。

 公爵は彼に魔力が戻っている事を知らないから、こんな話をするのだろうか。

 けれど……。

 大人になった私を命の脅威から守るの?

 加護持ちになった私だから守るというの?

 それは余りにも自分勝手。
 何一つ、私への愛情を感じない言葉。

 公爵は私だから心配しているのではない。
 加護の力を持つ者だから、力を手の内にしておくためにこんな風に話しているだけ。

 悔しさの混じる涙を溢しながら、私は口を開いた。

「私は、あなたに守ってもらわなくても……」

「彼女は俺が守ります」

 声と共にジェイドが私の横に姿を現した。

 その横にはエマと、なぜかクリスタ様の姿もある。
(どうしてクリスタ様が一緒に?)

 同時に隠れていたギルも姿を見せた為、護衛騎士達は慌てて公爵の前に立ちはだかり剣を構えた。
 ジェイドはそれらから守るように私を腕の中に抱え込む。

「ローラ、ごめん。不安にさせたね」
「ジェイド……」

 美しい新緑の瞳が私を優しく見つめている。
 ギュッと抱きしめてくれるジェイドの腕の温かさに嬉しくなった。

「ううん。マイアも一緒だったし、ギルもいてくれたから。……それに、あなたが来てくれると分かっていたから」

 見上げながらそう言うと、ジェイドは嬉しそうに笑い、私の頬の涙を指で拭った。
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