虐げられた公爵家の赤髪の美姫〜溺愛されたのは私！？〜
14．疑惑の目
「お待たせしました」
「わぁ、美味しそう！」
ミアは出来上がった焼き菓子をテーブルに出した。甘いバターの香りとクルミの香りが香ばしい。色も形も失敗することなく作れたと思う。
（昔、お母さんと良く作ったのよね。味には自信があるけど…、どうかな）
ここのシェフが手際よく手伝ってくれたから、思った以上に早く仕上がってホッとした。
ドキドキしながら賓客の皆が食べるのを見守る。
「まぁ、美味しい！」
「うん、クルミが良い風味を出しているな」
「隣国のお菓子は美味しいね」
評判は上々だった。口々に褒めてくれる。
（良かった……）
ミアがホッと安心した、その時だった。
ガシャン！ お皿が落ちる音がして振り返る。
「サマル教授！？」
カルノが悲鳴を上げる。床にサマルがお腹を押さえながら倒れ込んでいた。皆が慌てて駆け寄っていく。カルノがサマルの体を支えた。
「先生、大丈夫ですか？」
「いたたた……、お腹が痛くて……、息が苦しいわ……」
「誰か医師を呼べ！」
騒然とする中、カルノがミアをキッと睨んだ。
「あなた、何をしたの？」
「え……？」
疑惑の目を寄せられてミアは目を丸くする。周囲が一斉にミアを振り返った。
（ちょっと待って。まさか、私が疑われている？）
思わぬ事態に、サッと青ざめる。テーブルのお菓子に視線をよこすと、サマルが一口食べた跡があった。ミアが作ったお菓子を食べた後に倒れたのだから、そのお菓子が原因であると物語っているようだ。
「ミア様、これはどういうことですか！？」
ジルズが厳しい顔でミアを振り返る。そう聞かれてもミアには心当たりなどないのだから、首を振るしかできない。
「わ、私は何も……」
「しかし、ミア様のお菓子を食べてこうなっているんですよ！」
「でも、私は何もしていません！」
そう否定するが、この状況では聞き入れてもらえない。その場の全員がミアに疑いを向けていた。そしてカルノは高くよく響く声で叫んだ。
「きっと、ミア様のお菓子に毒が入っていたんだわ！ そうよ、そうに決まっているわ！ でなければこんな事にならないもの！」
「衛兵！ ミア様を取り押さえろ！ 毒物混入の疑いがある！」
「えっ⁉」
ジルズの一声に、控えていた衛兵がミアを取り囲んだ。まさかの事態にミアは慌てて否定する。
「お待ちください！ 私は本当になにもしておりません！ いつもの手順で作っただけで、毒なんて入れていません！」
しかしミアの叫びは聞き入れてもらえない。
「見苦しい言い訳はお止めください。この事については、国王陛下にもご報告させていただきますよ」
冷たく、しかしどこか含みのある声色。そこでミアは全てを悟った。
（しまった、嵌められたんだわ！）
突如、作ることになったお菓子だが、元々そう言う話になるよう誘導されていたのかもしれない。
いや、ミアが作るならお菓子ではなく、何でも良かったのだろう。
何かしらミアを陥れるキッカケさえあれば……。
（全てはジルズ大臣の思い通りだったの！？ まさか、ここにいる人、全員が私を嵌めようと共謀していた！？）
そう気が付いた時にはもう遅かった。
「地下牢へお連れしろ」
「待ってください！ 私は本当になにも……！」
しかし、ミアの声は誰も聞いてもらえず、衛兵に抱えられるようにして部屋から追い出されてしまった。
ハザンの代わりにミアの警護をしていた者も、特にミアを庇う事なくただ様子を見ているだけ。
この警護の者もか、と分かった時には、部屋から連れ出されていた。
部屋の外に出て、遠くからハザンが「ミア様⁉」と驚く声がする。
「ハザンさん！」
しかし、ハザンが近寄る隙も与えずに、ミアはあっという間に連れていかれてしまった。角を曲がる際に、遠くでハザンが他の衛兵に足止めされているのがかすかに見えた。
「ここに入っていろ」
押し込まれたのは、地下の薄暗い地下牢だった。鉄格子の小さい部屋は明かりもなく肌寒い。
手の届く位置に窓はあるが、硬い鉄格子でどう頑張っても外には出られないようになっている。
「なんで……どうしてこんなことに……」
ミアは足から崩れ落ちた。お菓子作りに不備はなかったはずだ。何度も作ったことがあるし、手順も間違えていなかった。
でも、サマルの様子は嘘ではないと思う。脂汗もかいて、顔は真っ青だった。
ジルズの様子から、ミアが何かを作るよう仕組まれ、嵌められたようだがその証拠も確証もない。
そもそも、この会自体がおかしなものだったのだろう。
警戒はしていたが、故郷の紹介をしていくうちにその警戒心が緩んだことは否めない。
「どうしたら……」
「ミア様！」
衛兵に取り押さえられたハザンが、ミアの地下牢に押し込められた。
「ハザンさん！」
「申し訳ありません。地下牢へ侵入しようとしたら捕らえられてしまいました」
ハザンは悔しそうに唇を噛む。
王族警備隊に所属している人は選ばれた人だ。その人であっても、一人で大人数を相手するのは限度があるだろう。
同じ牢へ入れられたのは幸運だった。
「ミア様、これは一体どういうことですか？ 中で何があったのです？」
「私にもわかりません。お客様に故郷のお菓子を作るよう言われて……」
ミアは事の経緯を話した。ハザンは難しい顔をしながら聞いた後、小さくため息をついた。
「ジルズ大臣にやられましたね。きっとサマル教授は友好的に見えたでしょうけど、結婚反対派の人間だったのでしょう」
「国王陛下が承諾した会だったので、どこかでこれは大丈夫だと思っていたのかもしれません……」
国王陛下が許可を出した会に不参加は出来ない。
それに、急とはいえ陛下の承認を得た会でジルズが何かすることはないだろうという思いもあったのだ。
これが油断に繋がったともいえる。
（なんてバカだったの。私の油断のせいだわ）
肩を落とすと、ハザンは首を振った。
「誰でもそう思いますよ。ミア様は何も悪くありません。きっと、ジルズ大臣が反対派と共謀して、ミア様に料理を作るよう仕向けた……。ミア様の手伝いをしたシェフが何か毒を盛ったのかもしれませんね」
「そんなそぶりは……」
そう言いかけて口をつぐむ。
（なかったとは言い切れないわ。材料を取りに数分その場を離れたことがあった。終始、目を離さずにいたわけではないし、シェフに任せる部分もあったわ……）
シェフたちを疑いたくはなかったが、こうなっては誰が味方で誰が敵かなんて判断はつかない。
「この会も初めから仕組まれていたのかしら……」
「そうかもしれません。クラウ様が城からいなくなるタイミングを狙っていたのでしょう。申し訳ありません、ミア様。国王陛下が容認し、結婚賛成派も多数いる会だったので油断しておりました。私の責任です」
ハザンは深々と頭を下げた。
「ハザンさんが悪いわけではありません。国王からのお達しがあった話ですから、こんなことが起こるなんて思わないのも当然です。油断した私のせいなんです！」
「いいえ！ クラウ様からミア様を守るよう言いつけられていたのに……。いくら用事を言いつけられたとはいえ、ミア様のお側を離れるべきではありませんでした」
ハザンは悔しそうに地面を叩いた。
しかし今さら悔いてもどうしようもない。まずはこの状況を何とかしないといけなかった。
すると、カツンカツンと地下牢の階段を下りてくる音が聞こえる。ハザンはミアを守るように前に出た。
「おや、お二人お揃いで」
そう言って鉄格子の先にいるのは、下卑た笑みを浮かべたジルズだった。
「ジルズ大臣、あなたの仕業か？」
「ハザン。私の仕業とはどういうことかな？ ただの護衛が口の利き方に気をつけろ。しかし、ミア様。手作りお菓子に毒を仕込むとはなかなかやりますな」
「私は何もしておりません！」
否定するがジルズは首を横に振った。
「ミア様が作ったお菓子が原因と断定されました。あぁ、サマル殿は命に別状はありませんでしたよ。しかし、国王陛下にご報告を申し上げると大変ご立腹なされていた。当然ですよね、陛下が容認された会でこんなことが起きたんだから」
ジルズはどこか気持ちよさそうに、ぺらぺらと話をしている。
「ミア様は反対派を始末しようとなさり、ハザンは共謀した。その罪に問われています。お二人の処分は追ってお伝えします。しばらくはそこで、ご自分がなさったことを後悔されるといい」
ジルズは堪えきれなくなったのか、クスクスと笑いながら地下牢から出て行った。
（こんなに早く原因が特定されるものなの？ 罪状もまるで前から決まっていたかのよう。なんだか、ジルズ大臣の思う通りに事が上手く運んで行っている気がするわ……）
やはり、すべてジルズの思惑通りだったのだろうと確信する。
「どうしましょう。クラウ様が城に戻られるまでまだあと数日あります。きっとジルズ大臣はそれまでに私たちの処分を決めるでしょうね……。とりあえず、ミア様だけでもどうにか処分を免れないと……」
ハザンはブツブツと何かを考えている様子だった。ミアは硬い顔でハザンを見つめる。
「いえ、ハザンさんも一緒にここから出ましょう。私だけ出るのはダメです」
「しかしどうやって？ 鍵がかかっているし、外には衛兵もいます。ここから出ることはできません。ミア様おひとりでしたら、私が囮になってどうにか出すことは可能かもしれません」
「そんなことは絶対ダメです！」
そんなことしたらハザンは極刑間違いなしだ。それは絶対にダメだ。
どうにかできないか……。ミアは地下牢の中を見渡した。
（どうしましょう。クラウ様の帰りを待つまでに、何かしらの処分が言い渡されてしまう。さすがに処刑されることはないでしょうけど、追放はされてしまうかも……。そうしたらクラウ様と結婚どころではなくなってしまうわ。もう二度と会えない……）
それはどうしても嫌だった。どうにかしてここを出て無実を証明しなくてはいけない。
（どうにか脱出できないかしら……）
ミアは必死に考えた。
「わぁ、美味しそう！」
ミアは出来上がった焼き菓子をテーブルに出した。甘いバターの香りとクルミの香りが香ばしい。色も形も失敗することなく作れたと思う。
（昔、お母さんと良く作ったのよね。味には自信があるけど…、どうかな）
ここのシェフが手際よく手伝ってくれたから、思った以上に早く仕上がってホッとした。
ドキドキしながら賓客の皆が食べるのを見守る。
「まぁ、美味しい！」
「うん、クルミが良い風味を出しているな」
「隣国のお菓子は美味しいね」
評判は上々だった。口々に褒めてくれる。
（良かった……）
ミアがホッと安心した、その時だった。
ガシャン！ お皿が落ちる音がして振り返る。
「サマル教授！？」
カルノが悲鳴を上げる。床にサマルがお腹を押さえながら倒れ込んでいた。皆が慌てて駆け寄っていく。カルノがサマルの体を支えた。
「先生、大丈夫ですか？」
「いたたた……、お腹が痛くて……、息が苦しいわ……」
「誰か医師を呼べ！」
騒然とする中、カルノがミアをキッと睨んだ。
「あなた、何をしたの？」
「え……？」
疑惑の目を寄せられてミアは目を丸くする。周囲が一斉にミアを振り返った。
（ちょっと待って。まさか、私が疑われている？）
思わぬ事態に、サッと青ざめる。テーブルのお菓子に視線をよこすと、サマルが一口食べた跡があった。ミアが作ったお菓子を食べた後に倒れたのだから、そのお菓子が原因であると物語っているようだ。
「ミア様、これはどういうことですか！？」
ジルズが厳しい顔でミアを振り返る。そう聞かれてもミアには心当たりなどないのだから、首を振るしかできない。
「わ、私は何も……」
「しかし、ミア様のお菓子を食べてこうなっているんですよ！」
「でも、私は何もしていません！」
そう否定するが、この状況では聞き入れてもらえない。その場の全員がミアに疑いを向けていた。そしてカルノは高くよく響く声で叫んだ。
「きっと、ミア様のお菓子に毒が入っていたんだわ！ そうよ、そうに決まっているわ！ でなければこんな事にならないもの！」
「衛兵！ ミア様を取り押さえろ！ 毒物混入の疑いがある！」
「えっ⁉」
ジルズの一声に、控えていた衛兵がミアを取り囲んだ。まさかの事態にミアは慌てて否定する。
「お待ちください！ 私は本当になにもしておりません！ いつもの手順で作っただけで、毒なんて入れていません！」
しかしミアの叫びは聞き入れてもらえない。
「見苦しい言い訳はお止めください。この事については、国王陛下にもご報告させていただきますよ」
冷たく、しかしどこか含みのある声色。そこでミアは全てを悟った。
（しまった、嵌められたんだわ！）
突如、作ることになったお菓子だが、元々そう言う話になるよう誘導されていたのかもしれない。
いや、ミアが作るならお菓子ではなく、何でも良かったのだろう。
何かしらミアを陥れるキッカケさえあれば……。
（全てはジルズ大臣の思い通りだったの！？ まさか、ここにいる人、全員が私を嵌めようと共謀していた！？）
そう気が付いた時にはもう遅かった。
「地下牢へお連れしろ」
「待ってください！ 私は本当になにも……！」
しかし、ミアの声は誰も聞いてもらえず、衛兵に抱えられるようにして部屋から追い出されてしまった。
ハザンの代わりにミアの警護をしていた者も、特にミアを庇う事なくただ様子を見ているだけ。
この警護の者もか、と分かった時には、部屋から連れ出されていた。
部屋の外に出て、遠くからハザンが「ミア様⁉」と驚く声がする。
「ハザンさん！」
しかし、ハザンが近寄る隙も与えずに、ミアはあっという間に連れていかれてしまった。角を曲がる際に、遠くでハザンが他の衛兵に足止めされているのがかすかに見えた。
「ここに入っていろ」
押し込まれたのは、地下の薄暗い地下牢だった。鉄格子の小さい部屋は明かりもなく肌寒い。
手の届く位置に窓はあるが、硬い鉄格子でどう頑張っても外には出られないようになっている。
「なんで……どうしてこんなことに……」
ミアは足から崩れ落ちた。お菓子作りに不備はなかったはずだ。何度も作ったことがあるし、手順も間違えていなかった。
でも、サマルの様子は嘘ではないと思う。脂汗もかいて、顔は真っ青だった。
ジルズの様子から、ミアが何かを作るよう仕組まれ、嵌められたようだがその証拠も確証もない。
そもそも、この会自体がおかしなものだったのだろう。
警戒はしていたが、故郷の紹介をしていくうちにその警戒心が緩んだことは否めない。
「どうしたら……」
「ミア様！」
衛兵に取り押さえられたハザンが、ミアの地下牢に押し込められた。
「ハザンさん！」
「申し訳ありません。地下牢へ侵入しようとしたら捕らえられてしまいました」
ハザンは悔しそうに唇を噛む。
王族警備隊に所属している人は選ばれた人だ。その人であっても、一人で大人数を相手するのは限度があるだろう。
同じ牢へ入れられたのは幸運だった。
「ミア様、これは一体どういうことですか？ 中で何があったのです？」
「私にもわかりません。お客様に故郷のお菓子を作るよう言われて……」
ミアは事の経緯を話した。ハザンは難しい顔をしながら聞いた後、小さくため息をついた。
「ジルズ大臣にやられましたね。きっとサマル教授は友好的に見えたでしょうけど、結婚反対派の人間だったのでしょう」
「国王陛下が承諾した会だったので、どこかでこれは大丈夫だと思っていたのかもしれません……」
国王陛下が許可を出した会に不参加は出来ない。
それに、急とはいえ陛下の承認を得た会でジルズが何かすることはないだろうという思いもあったのだ。
これが油断に繋がったともいえる。
（なんてバカだったの。私の油断のせいだわ）
肩を落とすと、ハザンは首を振った。
「誰でもそう思いますよ。ミア様は何も悪くありません。きっと、ジルズ大臣が反対派と共謀して、ミア様に料理を作るよう仕向けた……。ミア様の手伝いをしたシェフが何か毒を盛ったのかもしれませんね」
「そんなそぶりは……」
そう言いかけて口をつぐむ。
（なかったとは言い切れないわ。材料を取りに数分その場を離れたことがあった。終始、目を離さずにいたわけではないし、シェフに任せる部分もあったわ……）
シェフたちを疑いたくはなかったが、こうなっては誰が味方で誰が敵かなんて判断はつかない。
「この会も初めから仕組まれていたのかしら……」
「そうかもしれません。クラウ様が城からいなくなるタイミングを狙っていたのでしょう。申し訳ありません、ミア様。国王陛下が容認し、結婚賛成派も多数いる会だったので油断しておりました。私の責任です」
ハザンは深々と頭を下げた。
「ハザンさんが悪いわけではありません。国王からのお達しがあった話ですから、こんなことが起こるなんて思わないのも当然です。油断した私のせいなんです！」
「いいえ！ クラウ様からミア様を守るよう言いつけられていたのに……。いくら用事を言いつけられたとはいえ、ミア様のお側を離れるべきではありませんでした」
ハザンは悔しそうに地面を叩いた。
しかし今さら悔いてもどうしようもない。まずはこの状況を何とかしないといけなかった。
すると、カツンカツンと地下牢の階段を下りてくる音が聞こえる。ハザンはミアを守るように前に出た。
「おや、お二人お揃いで」
そう言って鉄格子の先にいるのは、下卑た笑みを浮かべたジルズだった。
「ジルズ大臣、あなたの仕業か？」
「ハザン。私の仕業とはどういうことかな？ ただの護衛が口の利き方に気をつけろ。しかし、ミア様。手作りお菓子に毒を仕込むとはなかなかやりますな」
「私は何もしておりません！」
否定するがジルズは首を横に振った。
「ミア様が作ったお菓子が原因と断定されました。あぁ、サマル殿は命に別状はありませんでしたよ。しかし、国王陛下にご報告を申し上げると大変ご立腹なされていた。当然ですよね、陛下が容認された会でこんなことが起きたんだから」
ジルズはどこか気持ちよさそうに、ぺらぺらと話をしている。
「ミア様は反対派を始末しようとなさり、ハザンは共謀した。その罪に問われています。お二人の処分は追ってお伝えします。しばらくはそこで、ご自分がなさったことを後悔されるといい」
ジルズは堪えきれなくなったのか、クスクスと笑いながら地下牢から出て行った。
（こんなに早く原因が特定されるものなの？ 罪状もまるで前から決まっていたかのよう。なんだか、ジルズ大臣の思う通りに事が上手く運んで行っている気がするわ……）
やはり、すべてジルズの思惑通りだったのだろうと確信する。
「どうしましょう。クラウ様が城に戻られるまでまだあと数日あります。きっとジルズ大臣はそれまでに私たちの処分を決めるでしょうね……。とりあえず、ミア様だけでもどうにか処分を免れないと……」
ハザンはブツブツと何かを考えている様子だった。ミアは硬い顔でハザンを見つめる。
「いえ、ハザンさんも一緒にここから出ましょう。私だけ出るのはダメです」
「しかしどうやって？ 鍵がかかっているし、外には衛兵もいます。ここから出ることはできません。ミア様おひとりでしたら、私が囮になってどうにか出すことは可能かもしれません」
「そんなことは絶対ダメです！」
そんなことしたらハザンは極刑間違いなしだ。それは絶対にダメだ。
どうにかできないか……。ミアは地下牢の中を見渡した。
（どうしましょう。クラウ様の帰りを待つまでに、何かしらの処分が言い渡されてしまう。さすがに処刑されることはないでしょうけど、追放はされてしまうかも……。そうしたらクラウ様と結婚どころではなくなってしまうわ。もう二度と会えない……）
それはどうしても嫌だった。どうにかしてここを出て無実を証明しなくてはいけない。
（どうにか脱出できないかしら……）
ミアは必死に考えた。
