まどろみ3秒前

sleep 5 嘘つき。


目を開けると、真っ白な天井が広がっていた。


昼の日差しではない、窓から差すこのオレンジ色は、夕方の日差しだということがわかった。

どこからかで沸き上がる力で勢いよく起き上がって、スマホを開いた。


「…っ起きれた、私…」


眠ってから、1日経っていた。私は、彼に言い放った「また明日」を叶えられたのだ。

言葉に表せない嬉しさで、鼻の奥がツンと痛んだ。

時間はもう夕方の5時半だったが、そんなことは心の底からどうでもいい。

3、4、2日…ときて1日になった。

3日眠ってその境から日を跨いでばかりだったが、今日という日を跨がなかった嬉しさに、泣きそうだった。ちゃんと、朝ではないけれど起きることができた。


立ち上がっても、全く体の違和感はない。階段を登ってリビングの扉を開いた。


「おはよ、お母さん」


久しぶりだ。扉から顔を出して、キッチンで洗い物をするお母さんに声をかけた。

「翠!?」と驚いたように駆け寄ってくる。


「お、おおお起きれたの!?!?」

「うん、起きれた。夕方だけど」


リビングは、窓から差す夕陽色に染まっていた。眩しくて目を細める。
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