まどろみ3秒前
食欲はないが念のためにご飯を食べた。歯磨きをきちんとして、ボサボサに跳ねた髪をアイロンで整えて少し巻いてみたりした。
洗面所でうまく巻けなくて、うう…と唸り声をあげていると、お母さんがやってきた。
「…翠?え、どっか行くの?」
「あー、ちょっと友達と勉強しにね」
「そう。ほんっとうに翠はえらいねぇ」
バカみたい、という意味で笑ってしまった。約17年一緒にいてわからないのだろうか。私が勉強したいわけない。えらくもないのに、そう思われるのはあまり良い気がしない。
―ピロンッ
久しぶりに、私はメッセージ音を耳で聞いた。開いてみると、案の定、あの人からだった。
『え、まじ』
初めて、スマホに向かって笑ってしまった。
あとのメッセージは、なんだか長文だった。時間、場所、持ってくるもの…とあった。以前から文章をうっていたのかもしれない。
こんなにきっちり伝えてくれるのか…やる気すぎて笑ってしまう。
服装は、悩んだ末に高校の制服で行くことにした。なんの関係でもないのだし、意識する必要はない。勉強するというだけだ。
送ってくれたメッセージを見て持ち物などの準備をした。上着を羽織ってトートバッグを肩にかけた。