まどろみ3秒前


日が沈む夕方、テスト勉強もせず、私は愛用の赤い傘とスマホを持って家を出た。

私が出たと同時に、雨が更に強くなった。容赦なく傘の上に雨が落ち、弾みくる雨は力強くて、一粒一粒とても強い音がする。

傘をさしていても、斜めからの雨で制服が濡れてしまう。私は、スマホを片手にその場所へと走った。


―私は今日、死のうと思う。








『おちょこ橋』


スマホで調べると、少ない画像写真と共に、すぐにそこは出てきた。


緑ぽく錆びきった橋。その橋は、まるで崩壊するのを待っているかのように、すぐにでも壊れてしまいそうな橋だった。石なのかコンクリートで作られたのかはよくわからない。


住宅街の真ん中にある、川から道を繋ぐ小さく短い橋だ。こんな橋、知らなかった。


最近、もう一つ奥に新しく橋が出来たらしく、こんなにも年季が入ったボロボロな橋を、わざわざ人が通ることは絶対になさそう。


―私と同じように思えた。崩壊するのを待っているかのような、私みたいな橋。


橋に足を踏み入れて、下に流れる川を覗く。

案の定、雨で水量が多くなり、氾濫しそうなくらい深い水量になっている。川の流れも荒い。下には、尖った岩などがある。

それでも、この川は、綺麗で透明だ。緑のコケや、ポイ捨てされた缶や地面が見える。

曇り空と、空から降り落ちる雨までも全てが水面に映っている。もちろん、ひょっこりと顔を出した私も雨と共に水面に映っていた。

水面に映る私は、また笑っていた。


「どうでもいいや、ぜーんぶ」


早く、死んでしまいたい。
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