まどろみ3秒前

扉を開けてみると、頭上はピンク色とオレンジ色に染まった空が広がっていた。白い雲は細長く横に広がり、1枚の絵のようだ。

スマホで写真でも撮ろうかと思ったが、無駄だと思ってやめた。


「行ってきまーす」


今を生きる人からすれば、今は、もう1日の終わりに近いだろう。

私からすれば、今この瞬間が朝になる。


ぼーっと空を眺めていると、「行ってらっしゃい」と後ろから声が聞こえた。笑顔を作って手を振ってくれる、お母さんがいた。








「…ここ、どこだろ」


道に、迷ってしまった。


最悪だ。本当に私は頭が悪い。どうして道を覚えられないんだ、どんだけ方向音痴なんだと、変えれもしないのに自分に叱った。

こっちかな?いやきっとこっちだ、と進んできたら、全く知らない道に出てしまった。合っているだろうと思い込んで、更に奥へ進んでしまったのだ。


見知らぬ道路、見知らぬ公園、見知らぬサラリーマン、見知らぬ子供たち。

過ぎていく風景に、心がどんどん不安になり折れそうになる。


スマホを見てみるが、ここはどこなのか、彼の家もどこかわからない。白いマンションだったんだけど…どこかな。
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