まどろみ3秒前
もう時刻は7時前くらいだった。
私は、昨日から定位置になった彼の部屋のクッションにお尻を預ける。彼も机を挟んで腰を下ろした。
暖房のよくきいた部屋、果実のアロマの匂い。自分の家よりもここは落ち着く。
持ってきたペットボトルのウーロン茶を飲みながら少し落ち着いてきたところで、彼の目が私の膝に止まる。
「え、昨日そんな傷あった?」
昨日…彼は何も考えずに発した言葉なのかもしれないが、私にはじわりと心に染みた。
朝くんと、昨日の会話なんて出来るようになったんだな…
「迷子になってるとき転げちゃって」
はは…と笑みを浮かべると、「大丈夫?」と彼は驚いたように大きく目を開けた。
「あー全然大丈夫。腫れてただけなんで」
「…誰かに、絆創膏もらった?」
首を傾げられたので、私は隠すつもりもなく頷いて答えた。
「驚くことに男子のクラスメイトに偶然会って、ちょっと助けてもらって。方向音痴な私があそこに戻ってこれたのも、そのクラスメイトがいなかったら、私は迷子のままでしたね」
はは…と苦笑いを浮かべると、「ふうん?」と彼は私の隣に突然来て座り込んだ。