まどろみ3秒前

「ずっと、笑ってる。確かに八方美人だわ。好かれようとしてんのかな?話すだけで疲れる。あんな人、まじ無理」


「言い過ぎー」「柚ちゃんそんな人だった!?」とぷはは、と笑っていた。

私は一体、今まで誰のことが好きだったのかな。そんなことも、わからなくなっていた。

胸が苦しい、辛くて痛かった。

私はただ、笑ってただけ。誰にでも言い顔をする、八方美人に思われていたなんて…そんなの、意識もしてないのに。



柚との関係は、それきりだった。

柚に話しかけられると、なるべく早く会話を簡潔に終わらせるようにして、柚を避けるようにした。

その方が、きっと柚のためにもなると思った。


「ねぇ翠、どうしたの?」


全部が、嫌い。顔もそういう性格も。全てがうざったらしくて憎く見えた。


「はは、柚、無理しなくていーよ?」

「…へ?」


気まずくなって、それ以来全く話さなくなった。完全に私のことを嫌いになっただろうし、私だって大嫌いだったから。

柚は他の友達のところへ行った。私は、ひとりになった。

柚の行った高校も知らない。

別に、どうでもよかったけどあんな人。そう思って私はまた笑みを浮かべて笑っていた。

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