まどろみ3秒前

だから今、表面上友達の小鳥も、本当は私のことが嫌いなのかな、と思ってしまう。

いや、きっと嫌いだろう。小鳥は、柚と似て優しいから。


私は誰にも心を開けない。

誰にも開くつもりも、なかった。



「すーい!!!」


はっと我に返ると、隣には小鳥がいた。下校時刻になり、今日も一緒に帰っていたのだ。

今日は、空1面が曇り空だ。厚い雲で覆われていて、雨が降りそうだった。傘を持ってきたが、私の無駄だったみたいだ。


「どしたの?珍しく、暗い顔して」


「あー」と私は笑って笑みを浮かべた。珍しく、暗い顔。それは私がいつも暗いのを隠して笑っているからだろう。どこか、チクチクとして嘘みたいに胸が痛かった。


「なーんでもない」

「…ふうん」


小鳥には、私の症状については話していない。だから、そういう話が出来ない。別に、相談したいわけでもないしどうでもいいが。


「翠、最近毎日学校来れてるよねぇ」

「あーうんそだね、」


その話題からそらそうと新しい話題を考える。迷ったときには天気や温度のことを言えばいい…と誰かが言っていた。


「…今日は、曇りだね。気分下がるー」

「ね」


会話というものは、意識したら気まずくなったりするのかもしれない。
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