まどろみ3秒前
いつも行っていた病院は、駅から近くの場所にある。決して大きくはない病院だが、評判もよくて地元の人々に愛されており、多くの人が診察してもらっている。
だが、私の自分でしか起きれないような正体不明の病気は、当然、医者も困っていた。
小学生の頃から来ているので、中年くらいの医者とは互いに顔見知りだ。看護婦さんは何度も変わり、今は、若くて華奢な女の人。
「天塔さん。久しぶりだね」
医者は、私たちに優しく笑いかける。お母さんに軽く会釈をした。
「最近はどうだい?」
私が話すよりも先に、医者は今の現状を聞いてきた。心配していたのかもしれない。
私も医者のように優しく笑いかけた。
「最近、毎日ちゃんと朝に起きれるんですよ!」
「…え、そうなのかい!?」
驚いたように医者は睫の長い目をパチパチ動かす。お母さんも、「そうなんですよぉー」とニコッと笑った。
医者は、ゴホンと咳払いをして、「それでね、」と続けた。
「電車に乗ったら近いかな。ここよりも大きな病院があるんです。…天塔さん、そこへ行きなさい」
医者は、少しだけ強い口調だった。