まどろみ3秒前
「…天塔さん。ひとつ、いいですか」
ゾクリと嫌な予感が走った。何を言われるのか怖かった。私は、また笑みを浮かべる。
「…なんですか?てか私、もう次の日の朝に起きれるし治ってるんですけどー」
「どうやらその病気は、一生治りません」
…え?胸が、締め付けるように、張り裂けるように痛くて、思わず涙が出そうになった。さっき言ったことと矛盾しすぎている。
どうして?どう、して…?
「詳しいことは知りません。絶対に治るんです。治るんですけど、絶対に治らない。…そう、あの医者は言ってました。とりあえず、今の起きれる、というのは、まだ治っていない」
「…どういうこと?どういうことですか。私、治ったんですけど」
座っていたパイプ椅子から思わず立ち上がった。静かに聞いていたお母さんも、医者も、端っこで話を聞いていた若い看護婦さんも、私を見て「え」と驚いた表情をしていた。
私が、こんなに必死になっているのが珍しいのだろう。そんなこと、どうでもいい。
「落ち着いてください。わからないんです、私にも。だからその病院の医者に詳細を―」
「なんで?医者ですよね?なんでわからないんですか?」
言ったあとに、必死になっているのが笑えてきて、私は笑みを浮かべて、椅子に座った。
お母さんは後ろで「翠、なんてことを…」と言っていたが、私の耳には通らない。