まどろみ3秒前
「そうですね。天塔さんの言う通りだ」
「…」
「僕は医者という称号をもらい、仕事をさせてもらっている。僕に患った体を預けてくれているのだから、助け出すのは僕の役目です。なのに、君を、助け出せない。こう見えて、とてもとても、悔しくてたまらないんですよ。…本当に、ごめんね」
医者は、優しい目だった。まるで、太陽のように温かい。浮かべていた笑みは、自然と剥がれた。
「……ごめんなさい。ほんと、ごめんなさい。私バカですね…ほんとに」
涙が出そうになって、必死に堪えた。あんなことを言った私は、本当に悪い奴だ。また、こんな自分が死ぬほど嫌いになった。
「君の気持ち、すごくわかるよ。…実はね。僕の息子も、君と同じように、何の病かわからない、恐ろしい病気を患っていてね」
「…そうなんですか」
「とても、天塔さんと重なるなぁ…」
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「翠、どうする?その病院を調べたら、電車乗ったらすぐ着くとこにあるらしいよ」
「ん、行く」
優柔不断な私は、珍しくすぐに答えた。空は青く、綺麗だ。病院から出てもまだ5時前ほどだった。私たちは、電車に乗った。
電車はあまり乗らないな、なんて思った。高校だって自転車か歩きでいつも行っているくらいの距離だし。