まどろみ3秒前

私と同じような高校生や、会社終わりのサラリーマンたちが車体の動きに体を揺らしていた。


―ガタンゴトン…


規則的に鳴る電車の音。私は静かに、お母さんの隣にちょこんと座っていた。

あのお医者さんのこと、朝くんに勉強は無理そうだと伝えなければならないこと、自分のこと。沢山のことが頭を巡る。

今まで考えないようにしてきたものが、溢れてしまったのかもしれない。








医者の言う通り、大きな病院だった。

内科や外科、産婦人科、精神科など、様々な分野の病を取り扱っているようだ。

あまり大きな病院慣れをしていない私はただただ圧倒された。平日なのに、人は沢山いた。駐車場や待合室がとても広々していた。


「はーい、天塔さーん」


名前が呼ばれて、すぐに立ち上がった。小走りで診察室へ入ると、その医者はいた。

真っ白な診察衣を着た、若い、20代くらいの男の先生。この人が…


「こんにちは。君が、天塔さんだね。お母さんもどうぞお掛けになって下さい」


若い男の人で、どこか緊張する。用意された椅子に爆弾でもしかれられてるんじゃないかくらいに、恐る恐ると座った。
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