まどろみ3秒前


病院内を軽く散歩して戻ってきたとき、丁度お母さんが診察室から出てきた。お母さんは私を見ると、ほっとしたように微笑んだ。


診察室へもう一度入り、私はまた、若い医者と向き合った。


「お母さんには、その病気との付き合い方についてお話ししてたんだよ」

「…病気?」


病気の付き合い方?意味がわからない。若い医者は、ひとつ間を置いて話し始めた。


「単刀直入に言うね」


若い医者は、真剣な表情をした。


「君は、白雪姫なんだよ」

「…は?」

「いや、眠れる森の美女ともいえるかな」


美女?姫?何故、私が白雪姫や美女にならなければならないのかわからなかった。いい気もしないし、あまり悪い気もしない。

意味がわからず、「なにそれ」と笑った。だが、若い医者やお母さんも、至って真剣な表情だった。


「白雪姫と眠り姫の童話は知ってる?」


一応知っている。眠れる森の美女という童話は、聞いたことがあるだけであまり知らないが、「はぁ」と曖昧に返事をした。


「眠りについた姫は、王子のキスで目覚める。白雪姫も眠り姫も結末はそれだ」


軽々しくキスなんて言わないでほしい、なんて思春期ながら思い、曖昧に頷いた。
< 138 / 426 >

この作品をシェア

pagetop