まどろみ3秒前

「君もそれだ」

「……はい?」 

「まだ、病名は決まってない。君のそれは、未だ原因不明の病気なんだ。何日間も眠りにつくことがあり、決して、自分の意志では、起れない。そして、誰にも君を起こせない」

「それです、それ、私の、病気」


嬉しくて、安心した。鼻の奥がツンとして、涙が出そうになったが必死に堪えた。

私の症状は、原因不明の病気だったのだ。私の症状は、病気だということがようやくわかって、とてつもなく安心感があった。


もう、一瞬一瞬を無駄にしながら生きる必要もないんだ…ちゃんと、今を追い付ける…

ていうか、最近は毎朝次の日に起きれてるんだからもう治ったんじゃ…


「…天塔さん、あのね、」


若い医者は、言いずらそうに続ける。


「最近次の日に朝起きれているのは、睡眠時間に消費するエネルギーを摂取するためだと思われる。…だから、あのね。治ってるわけじゃない。この病気は、一生治らないんだ」

「…え、でも、治ったって聞いて」


この若いお医者さんが、この病の患者を治したんじゃないの?聞いていた話とは違う。

一生治らない、というのはどういうこと…?

若い医者は、しばらく黙っていた。静かな沈黙が流れる。静寂を破ったのは、他でもない若い医者だった。
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