まどろみ3秒前

橋に足をかけてよじ登る。落ちようと、私は体を前に倒れさせて、力を抜こうとした。

なのに、なのに…


「なんで落ちれないのかなぁ…」


力を抜けば私は落ちる。落ちて、死ぬ。

もうこの空も見れないし、2度と、この世界には生きれない。私はこの世界から、消えてなくなる。憎いけれど、憎いなりに愛着が沸いているのかもしれない。

私が死んだら、お母さんやクラスメイトはどう思うんだろう。私は消えてなくなるんだから、そんなの考えなくていいと思っていた。

でも、でも…


「死ねない…」


私は本当に情けなくて醜い奴だ。こんな時に、死ねない。


―その時だった。

こんな1人の時、いつも彼は来てくれる。


「おはよ、翠さん」


聞き慣れた声に顔を向けると、橋の上に立つ、彼がいた。


「なっ…なんで…」

「一応ここ、俺の通学路なんで」


彼は下を指差した。何言ってんだか…と口をポカンと開けていると、私を見て、「髪ボサボサ」と優しく笑われた。
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