まどろみ3秒前
「……俺と、寝る?」
彼は、パチパチと高速瞬きをする。
「あーほんとごめんなさい。何でもないですねやっぱ」
意味が全くわかっていないようで、彼は黙って目線を地面に落とした。
「ほんと気持ち悪いや私。なに言ってんだか意味わかんないし。ほんと、ごめんなさい」
はは、と笑って、私は行き先もないのに歩きだした。早く帰って、この言ったことを忘れてしまいたくて、早歩きで。
「ん、わーかった」
意味がわからずしばらくフリーズしていた。
やっとこと頭に入ってきて「えっ?」と振り返ると、彼は「ただし」と人差し指を立ててきた。
「翠さんのテストが終わったら以降」
「…え?な、え?」
事情は全く説明してないはずだ。なのに、今わかったって承知してくれた…?
「あと、もうひとつ条件がある」
「…条件?」
風が吹いた。私の髪と彼の髪が優しく揺れる。
彼は、まるで太陽のように優しく笑った。
「俺のことを、好きになってから」
「…え」
初めてだった。彼が私のことを好きだと言ってくれたけど、彼が私にそんなことを言うことは、絶対なかったのに。
その条件が満たされることは、あるのだろうか。
ごめん、朝くん。
私は、感情を自分で消してしまう。
多分、無理なんだよ…