まどろみ3秒前

私が眠りについたときに、眠ったとわかったら彼に声をかけて起こしてもらう。

家族や私自身だって起こせない。きっと、誰にも私を起こせないものだと思っていた。


運命の人といっても、別に恋愛対象というわけではないらしい。治った女性の患者も、恋愛対象じゃない女性だったらしい。


運命の人か…

運命の人しか私を起こせないとか、そんなロマンチックな病気、本当にあるのかと思ってしまうが、私はその病気だ。


でももし…

もし、あなたの声で起きれたなら…



「―よし、今日はこれで終了」


絶対に迷惑になるけど、ここで目を瞑ってしまえば絶対に寝れる。それくらい、今眠気が来ている、やばい。


「休憩少な…」

「え、疲れてるの休憩のせいにしてる?これは反省しなさいの罰だから」


なんだか対応を冷たくされて「うっ」となってしまう。


「…ずっと数字とか漢字だし…問題文は意味わかんないことばっか言っちゃってるし…」

「はいはいおつかれ」


朝くんは、どこか面倒くさそうに私をなだめて眼鏡を取る。朝くんだって、私の頭の悪さに疲れただろう。

時間を見ると、もう9時半だ。良い子ならもう寝てる時間か。


「テスト、3日後なんです」


無意識に下を向いていた。


「私、この頭でいけますかね。無理かも。せっかく朝くん教えてくれたのになぁ…ごめんなさい」


はは、と笑みを浮かべて笑った。


「なに勝手に諦めちゃってんの?」

「…だって」

「翠さんなら、絶対大丈夫だから」 


彼は優しく私に言った。だが、全く心に響かない。
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