まどろみ3秒前

「夕は?」

「俺は…別に好きじゃないクラスメイトに勉強教えてた」


ゆう、なんて呼んでくれるのはこいつだけだな、今となっては。


友達なんていうものはいない。出来たことがない。幼なじみで親同士も仲がよかったから、俺らは友達としていた。

どうせ昔から、表面柄だった。独りになって笑われることもないし、友達という存在があるだけで利益は大きいものなのだ。

俺は、変わっていくこいつが、大嫌いだ。

優しくて、いつも笑ってくれるいい奴だった。俺の友達として胸を張って言えていた。

なのに…こんな奴、大嫌いだ。…中学のときに色々あって話さなくなって、高校も知らなかった。行ってるのかもわからない。


だが、今この瞬間に謎は解けた。こいつは学校に通っているし、それに…


「変わってないな」

「あ?」

「頼まれたら断れないとことか?嫌いなんだったら断ったら?そーいうの時間の無駄だとは思わないの?」

「知ったように喋んな黙れ。あ、お前のことも俺は嫌いだから時間の無駄になるってことだけど。まじでもう吐きそうだわ」

「ぷ、はは。笑える」


その、続き。

俺も嫌い、と言うのを待っていた。

なのに、こいつは言わない。いつだって、言ってくれない。
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