まどろみ3秒前

…夜野 朝。夕という名前との共通点で、今思えば気持ち悪い親近感があった気がする。

夕陽が差した窓に近づいた朝は、落ちそうなくらいに体を預けている。死ぬのは、本当に怖くなさそうで。窓から運動場を、どこか寂しそうに見つめていた。


「…なあ、朝」

「なに」


こちらを振り向く朝に、話したいことがありすぎて言葉に詰まる。本当は、あの時から、ずっと、聞きたいことがあった。


風が吹く。窓のカーテンが揺れる。


「…何でも、ない」


何でもないわけがない。わかってるはずなのに、ずるいくらいに朝は何も言わなかった。


「…で、なにしてんの?」

「手紙入れにきた」

「…は、手紙?」

「そ。ラブレター」

「ら、ラ…!?まじでやめとけ。絶対フラれる。傷つくのはお前だ絶対」

「うわひど。俺はフラれない」

「フラれるわ。頭おかしいし変なことするだろ絶対。うわ、想像するだけで気持ち悪い」


大袈裟に気持ち悪い虫を見るかのような目をした。内心、ものすごく驚いていた。恋愛の話なんて今までしたことがなかったくらいに、朝には恋愛が嫌いなイメージがあったのに。また、変わってしまったのだろうか。
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