まどろみ3秒前

―キーンコーンカーンコーン…


昼食のチャイムが鳴った。

授業中もチラチラ彼女を観察していたが、普段通りだった。窓の先の空を見つめていたり、話を聞いているのかよくわからないが空虚な目を先生に向けていたりと。


「東花ー昼飯行こー」

「あー、うん」


いつ仲がよくなったのかわからないが、前に教えたクラスメイトに声をかけられた。

お弁当を教室で食べることにした。まあまあ楽しくて、いつもより食事が楽しく感じた。


食べ終わってふと、教室を出た。

ワイワイと賑わう廊下を背に、人通りの少ない廊下へと歩く。そして、あるひとつの窓枠を見つめる。この窓枠じゃないと見えない。

木に覆われて、壊れかけたベンチがある。

彼女が、いつもそこにひとりでお弁当を食べに来ていることを知っているのは、多分、俺だけ。

前に通りかかったとき、俺は窓から見た。ここにいることを知った。今日は、少しだけ彼女が気がかりだったから見に来ただけ。


「やめよ」


昼食をとる女を見に来てるとか、自分が気持ち悪い奴だと今気がついた。

あーやめよう。早く教室に戻―


「…えっ?」


思わず、2度見した。
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