まどろみ3秒前


「会ってきたら?」

「えっ?」

「お母さんに言いたいほど、思い出したい人なんでしょう?メールとか持ってるんじゃないの?それで会えば思い出せるよ、きっと」


自分の部屋へ行き、スマホを開いてみた。こんな私でも1週間も経てば、何件ものメールやセールスやニュースの通知は溜まっていた。

メールを開くと、1番上にあるアイコンがピン留めしてあった。


「朝…夜野朝…」


ああ、そうだった。思い出した。声も顔も、名前を聞けば思い出せた。名前がいかに大切なものなのかがわかった。

朝くんからのメールは何もなかった。彼はいつだってそうだった。


伝えたいことがあります。


すぐに、私はそのメールを送った。

送って既読がついたところで、後悔した。まるで、告白みたいになってしまっている。

伝えたいことて…なんて気持ち悪いことを…

返信は、ない。送信取り消しなんてすればもっと良くないしなぁ…なんて思っていたら、スマホから電話音が鳴り始めた。


深呼吸をして、応答ボタンを押した。

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