まどろみ3秒前

sleep 1 笑える。

―最初は、笑い話に過ぎなかった。


「お母さん、おはよ」


いつも通り、リビングのある二階へ上がる。

今日の私は、目覚まし時計からもお母さんからも起こされることなく、自分の体でふと起きた。

お母さんは、私の声を聞いた途端に、持っていたスマホを落としそうになりながら「翠！！」と目を大きくして私を見た。


「っもう10時だよー！早く準備準備しろおお！！」

「…ええ！？」


最初は、目覚まし時計に気付かないというのから始まった。

どうしてお母さんが起こしてくれないのか、そういう時にお母さんだろう？

機嫌悪く文句を言うと、お母さんは、どんなに大きな声を出しても、肩を揺すぶっても水で絞った雑巾を顔にぶっかけても、私の目が開くことはなかったと言った。

私は、目覚まし時計だけではなく、お母さんの声にも気付かずだったらしい。


私は、いつも目覚まし時計で起きれる。

そう言い切れるほど、毎朝、起きれた。


起きてスイッチを押さなければ、チリリリンッのうるさい音が鳴り止むことがないから。

止めて二度寝をしようにも、体質なのか二度寝が出来なくて、体が自然と起きてしまう。