まどろみ3秒前
「…て、てかなんで一緒に寝っ…」
「翠さん感情ないのに、そーいうの気にするんですね」
どうして初対面の相手に私は感情がないと言われなきゃいけないのだろう。感情はあるように、笑顔を貼り付けたりしたんだけど…、
目が覚めたら、男性とふたり一つベッドの上にいる。思春期だしこういうのは敏感なのに、こんな状況、めちゃくちゃ恥ずかしいし危険だし絶対に良くない。ほんと、最悪だ。
でも、ベッドでの温かさに体と心が包まれる。
「深夜2時とか眠いに決まってるし、ベッドにも入っちゃだめなんすか?俺の部屋なんだしいいでしょ別に」
そんなことは言いながらも、私をベッドに寝させてくれている。そこはどこか温かいと思う。私は小さくほっと息を吐く。
「俺のおかげ」
体が動かなくて、起き上がれない。息を感じて、恥ずかしいような感情以外何もない。
隣には、私と同じように横たわり、顔をこちらに向けている男がいる。
ああ、目が合わせられない。いつだって私は、弱虫なのだ。
「ほんとに死ぬところだったとこを、俺が機一髪で腕掴んで助けた。俺は翠さんの命の恩人ですよね?すごいでしょ、俺って」
ふん、と自慢げに笑う彼に私は反応もせずに再び天井を向いた。
「なんで、助けたの」
「…は?」
「私、元々死ぬために橋に来たのに、なんで助けたの?落としとけばよかったのに」
こんなの、答えられる方がおかしいことはわかっている。どうせ、言われることはわかっている。生きる希望をでも言うのだろうか。