まどろみ3秒前
「家です。どうでもいいんで。さよなら」
私は、自分の腕に力を込めて必死に引っ張る。だけど、なんでだろう。離してくれない。
「どうでもよくないから」
「…離してください」
「無理」
「…そういえば。私が橋から落ちようとしてたときも、腕掴んできてましたよね?その時と同じようにするんですね」
「…」
「偽善者。弱虫でバカな私を助けなんかして、自分を満たそうとしてるんじゃん」
「…なに言ってんの」
「わかるんですよ。もう」
彼は黙ってしまった。私は笑みを浮かべる。
「長く眠ってしまうような変な症状を持ってる私って、ほんと笑えますよねー?3日も寝たんですよ?まあ、別に気にしてないし」
どこか投げやりだった。
「どうでもいいんです。…だから、だからもう、何も考えたくないから。離してください、」
思い切り腕を引っ張る。すると、突然私の腕は彼の手からスルリと抜けた。
行ってもいい、ということだと察した私は、ここから逃げたくて適当に「ありがとうございました」と言い放ち、部屋を出る。
廊下を抜けると、玄関があった。そこには、何個かの靴たちと共に私の靴がある。
靴を履くと、ぐっちょりと濡れていて気持ちが悪かった。それでも扉を開け、外へ出た。