まどろみ3秒前
【said Touka】


―中学のときのことだった。

学校行事で修学旅行に行っていた。学校側はお金がなかったのか、それはそれはボロボロなホテルで、俺らは宿泊することになった。

俺と朝は同じ部屋で、布団も隣同士だった。5人部屋くらいで、当然、他の奴らもいたが、いびきをかきながら既に寝てしまった。


幼なじみで親友だった朝との関係は、あの瞬間に、呆気なく壊れてしまったんだと思う。


「俺、重度の不眠症なの」


夜、11時頃。俺と朝だけが起きていた。そんな時、朝は唐突に言ってきた。朝は俺に背を向けて寝転んでいて、顔は見えない。


「不眠症って、なんかおじいさんとかが眠れなくなるやつ?」

「おじいさんは違うけど、まあ、そう」


大人っぽい雰囲気であまり話さない印象を持たれがちな朝だが、特定の相手だと心を開いて、よく話してくれる。そんな人だ。


「え、じゃあ、寝れないってこと?」

「…そう、寝れない」


その時の俺は、その重度の、を聞き逃していて、全く重大さに気付いてなくて。

それが、不眠症といえないほど、恐ろしい病気だったことも、知らなかった。

冷房も付けてくれない部屋の中は、寝つけないくらいに、蒸し暑い。寝付ける奴らがすごいくらいに。


「不眠症って、どれくらい寝れないの?」


俺は気になったので聞いてみた。


「最近は酷くて、ずっとオールしてて。…もう、今夜で寝てなくて5日になる」


聞き間違いかと思い「い、5日?」と聞き返したが、どうやらこれは本当らしかった。朝は、5日間一睡も眠ってない…
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