まどろみ3秒前

「なんか、もう心が壊れた。崩壊した感じ」

「…っなに、俺のこと殺してもなんにもならないだろ?」


こんなの、朝じゃない。朝陽のような笑顔をした、いつも優しい朝はどこに行った?


全部、作り物だった?

殺される。このままじゃ、首…


冷たい、刃物の感触がする。朝は、それでも優しく笑う。その目の奥は、まるでコンクリートの、崩壊を夢見る壊れかけた橋のようだった。


「…あさ…殺す気…?俺のこと…こんな修学旅行中に…考えてたのかよ…刃物持って…」

「俺のことどう思ってる?優しい人?勉強できる人?バカな人?いつも笑ってる人?明るい人?暗い人?怖い人?夕は、俺のこと、嫌い?」


こんな恐ろしい状況とは端からに、いびきをかきながら他の奴らは眠っている。朝は、これが憎くて、仕方がないんだろう。


「表面上だった、ってことだろ?」


どうでもよかった。

友達とか、好きとか、嫌いとか。

これから、後悔することも知らずに。


「俺は、朝のこと優しいと思ってた。でも、違った。お前は、俺が知るいい奴だった朝じゃない。俺らは、幼なじみってだけで、表面上の友達だったってことなんだろ」


なんで、こんなこと言ったんだろう。俺は、刃先を下げられて少し安心したのだろうか。


「友達ってのは何かと楽だったから、俺らは友達になったんだろ?どうせ、そんなもんだったんだろ?幼馴染みでさ?」


朝の目は、涙で溢れかえっていた。拭いもせずに、ただ、溢れ落ちていく。
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