まどろみ3秒前

そんな体質を持った私が、お母さんの声にも気付かないのは、少しばかり違和感があった。


「疲れてるんじゃない?やっぱし」


私は焼き上がった食パンにかじりつきながら、「んー」と曖昧な返事をする。


「流石の睡眠力ですねぇ、翠さんは」


お母さんからは、心配の表情一つなく笑われた。私も、笑っていた。


急いで準備したつもりだったが、学校へ着くと、もう4限目の時間になっていた。

私が学校を休むことがあまりないので、遅れるというのにもなるとクラスがざわついた。


「寝坊しちゃったあ」


私は頭をかきながら、どこか呑気だった。


「え、翠寝坊したって!?」

「おい翠~昨日何時に寝たんだよ」


クラスメイトや友達からは、笑われた。

私も、笑った。


今日起きたのが10時。次の日は、なんと11時、その次の日は、12時にもなった。


それからだったんだ。 

それからが、悪夢のようだった。


毎日遅れてやってくる私は、段々と、寝坊だと言えなくなっていった。何かと色々な理由を付けて、笑みを浮かべるようになった。


学校でも当然、「あいつ今日も寝坊?やばくね?」と言われるようになっていった。


徐々に、私の体内時計は狂っていった。


不安定で、何時に私が起きるかなど、日によって変わった。夕方、酷い時は夜まで寝ていたときもあった。


それでも、どんな手を使っても、自分で起きることしか出来ない。


―いつから、崩壊したんだろう。いつから、笑い話に出来なくなったんだろうな…


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