まどろみ3秒前

「はは。ほら、俺に会いたくなくなったでしょ?」


朝くんは目を細めて、大人な顔つきで優しく笑う。それでも、私には怯える子猫に見えた。

ひるの存在は、朝くんの宝物だった。ひとりきりの夜を、一緒に過ごしてくれた。

だから、こんなにも大切にして…


「あさくん」


私は、優しく朝くんの頭を撫でる。朝くんが、眠り続ける私にそうしてくれたように。


「会いたくなくなるわけない」

「…」

「私に朝陽を見せてくれた時も、ずっと、怖かったんだね。朝くんは、眠れなかったから、朝陽を見るのは当たり前だったのに」


頷きもせず、朝くんは黙っていた。


「それでも、朝くんは、朝が昇ることは、夜が沈むことは、本当に奇跡で、すごいことって言ってた。心がどんなに苦しめられても、朝を生きようとしてる。本当に、すごいことなんだよ。だから、朝くんは、私の…」


私の、なんなんだろう。言葉に詰まる。ヒーロー?その言葉が近いような、遠いような。
< 300 / 426 >

この作品をシェア

pagetop