まどろみ3秒前
「ねぇ、翠さん」
世界でいちばん優しい声で、私を呼ぶ。
「翠さんの病気は、世界にたったひとり。いわゆる、王子様を探さなきゃなんでしょ?」
「…そう、だけど」
「俺からしたら翠さんは、俺のお姫様になる」
「……へ?」
朝くんをしばらくポカンと見つめる。「口開きすぎ」と突っ込まれて、ようやく我に返った。お、お姫様?私が?なんだ、それは。
「翠さんの声を聞いたら、体が落ち着いたように眠りに落ちれる。前に、真夜中に電話したその時、俺は、眠り方を思い出したわけじゃないのに、気付いたら、眠りに落ちてた」
「…え、え?」
「うわ、なに顔赤くしてんの」
笑われてしまい、思わず、顔赤い?と自分の頬に手を当てる。ああ、確かに、熱い。
こんな自分がどことなく気持ち悪く感じる。最悪だ、何を、意識してるのか。
「俺は、翠さんが死んだら、本当に心が辛くなる。…だから、勝手に俺は翠さんに賭けしてた。翠さんが死ぬなら、俺も死のうって。別に、死ぬ怖さとか何も考えてなかった。軽い気持ちだっただけだけど」
だから、一緒に死ぬのが夢なんて言ったのか。賭けごとだったんだ。それくらい、朝くんは心を病んでいた。