まどろみ3秒前
sleep 14 愛してる。
「あの、朝くん、おはよう」
―雨の音は続いている。
一向に止むことを知らない雨の音が、病室に響き続ける。窓から雨風が吹いても、枯れたクローバーは揺れずにいた。
朝くんに連れられて病院に帰ってきたのだ。
私はベッドに腰を下ろして座り、朝くんは、隣にあるパイプ椅子に座っている。
病室に彼がいるという謎の違和感に、どうしてもついていけなかった。
「なに急に」
「いや、私、言ってなかったんで、一応」
3ヶ月も互いの生存確認すらできてかったくせに、朝くんは私に躊躇なく語りかけてくれる。そこが、どこか嬉しくあった。
「ん、おはよ」
私が言いたかっただけだったのだが、朝くんは当たり前のように言い返してくれる。これが2回目だということにも関わらず、だ。
「まあどうせ、また寝ちゃうんだけどね」
笑みを浮かべながら、窓を見やった。
目を、合わせたくなかったから。
「また3ヶ月も寝たっていうショックで死にたくなって、彷徨ってたんでしょ?何も持たず、こんな大雨の中を。俺がいなかったら、まじで死んでたんじゃない?」
無意識なのか少し頬を膨らませて、怒り口調な朝くんに、私は黙ってこくんと頷く。
私から話す会話が見当たらない。3ヶ月間何してた?なんて、私がどうせ傷つくだけだ、私は、どうせ眠ってしまうだけの人間なのに、今更、何を話したらいいのだろうか。
「起きてくれてよかった。ほんとに」
「…また、寝ちゃうのに?」
え?朝くんは、どこか惚けた顔をする。