まどろみ3秒前

「怖いんでしょ?平気に笑ってるけど」

「…なにも、怖くない」


なに急に、と笑う私は、嘘をついた上に、本当に、バカみたいだった。

掴まれた頬が、ビリビリと地味に痛む。


「俺は怖いんだよ」

「なんで?怖くなる必要、ないじゃん…」


声が震える。

怖いのは、私だけでいい。同情とか、そんなものはいらない。嫌いだ。それは、朝くんが1番よくわかっているはずなのに。


「もう一生、いや死んでも、翠さんと会えないような気がしてたから」


私のことを、寂しげな目で見つめる。


―そんな目で、見ないでよ…


朝くんは、いつだって病気の話をしなかった。夜を忘れさせてくれるくらいに、朝陽のような、尊くて優しい眼差しだったのに。


「もうずっと、顔も見れないし話せないかもしれない。そう思うと、怖かった。……3ヶ月間、ずっと、眠れない毎日だった」


だからずっと雨が降ってた、と彼は言った。


眠れない。そうだ、朝くんはそんな病気を…

話を変えたい。嫌だ、私はこんな…

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