まどろみ3秒前


静かな教室。割れそうな教室の床も先生の口調も、この学校の風景も、もう見れないと思っていたのに。死のうとしてたのに。

窓の枠に映る、雨上がりの青い空を見つめる。運動場はまだ、水溜まりがある。外の部活の人は、内練になるのだろうか。

どうしても、あの人を思い出してしまう。考えれば、助けてくれたのに偽善者とか。私、やっぱり最低だったかな。


「んじゃ今日は、久しぶりに教室に天塔さんいるので、天塔さんに聞こうかなぁー!!」


狭い教室で大声を上げる男の先生が、私を見ていた。そして、クラスメイトの視線もこちらにあった。

…久しぶりに教室に天塔いるので、か。


「久しぶりに教室にいるとか、やばくね?」

「だよねー?先生、空気読めなー」

「天塔さん傷つくじゃん」


ざわざわと騒ぎ始める教室。何も考えていない先生には聞こえていないようで、私の目を見て、ある、質問をした。


「天塔さんの夢はなに?」


どうして、こんな問いかけをする流れになったの?今ってなんの授業だっけ、歴史だ。


「まあ夢なんてね。高校生なんで、本格的になってきたでしょう。どーぞ、夢はなに?」


答えなきゃ、だめ。

答えなきゃ、私は、だめ。


笑いながらこちらを見て待っている男子の視線、どこか心配そうな表情を浮かべる女子の視線。
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