まどろみ3秒前

「なに男の子と抱き合って泣いてんの?まじでどんだけ病んでんだよ」

「いや、そっちこそなんで帰ってないの?頭おかしいんじゃない?」

「は?あれで素直に俺が帰るとでも思った?」

「は?知らないわそんなこと。追ってくんなつってんのになんで来るの?鬱陶しい」

「ええー?じゃあなんで、俺のあげた四つ葉を探してんの?あー俺のこと好きなの」



我に返って、葛藤していたことに気付いた。むっとする朝くんに、思わず笑みが溢れた。

自分の病室に帰りながら、私は事情を説明する。

四つ葉のクローバーがなくて朝くんを探していたこと、男の子が泣いていたこと、明日の約束をしてしまったこと、。


「嘘つき」


彼は、落ち着いた口調で言った。その通りだと頷く。


「ほんと、嘘つく自分が死ぬほど嫌い。吐き気がする。…私、最低な奴だな……」


うまく笑えているだろうか。笑えてないかな。そんなことも、よくわからない。


「でも、えらい」

「…えっ?」

「その子を助けて、えらかった」

「えらくないから別に…」

「えらいえらい。あの子、翠さんに助けられてすごく嬉しかったと思う。ほら、すいちゃんでよかった、って言ってくれたんでしょ?そこは自分を誉めないと」

「…うん」

「あと、勝手に自分のこと嫌いになんないでくれる?やってるのも笑うのも泣くのも、全部自分なのに。自分を嫌いになってどうすんの」

「…朝くんって、そんなにクサイ人だったっけ」

「は、臭いって体臭が?なに?」


違う違います!、と全力で首を横に振る。
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