まどろみ3秒前
―ねぇ、朝くん。
私は、どこか必死な彼の表情に問いかけた。
私には、わかるんだ。
もう目を瞑れば、私が終わるってことが。
「…っんなこと、俺がするわけないだろ?」
「あれ、朝くん怒ってる?」
「笑うなって…死んだように笑う翠さんじゃなくて、俺は、生きたように笑う翠さんがのことが…大好きなのに……」
崩れそうな私と、崩れる寸前の朝くん。同じだったんだ。
私は、強引にベッドに横になって、朝くんに寝顔を見られるとか嫌だからって、パイプ椅子に座る朝くんに背を向ける。眠る準備だ。
「眠たくなってきたからさ」
雨の音がする。雨は収まってきたようで、止みそうだった。
「ばいばい、おやすみ」
おやすみって、こんなに、辛かったっけ。
目を瞑ろうと、瞼を半目閉じたところで、黙っていた朝くんが、言った。
「…ギネス記録」
「え?」
思わず、朝くんの方を見る。崩壊しそうな目で、彼は笑っている。
「ギネス世界記録、更新しちゃおう2人で。俺と、翠さんで」
「うん…わかった…約束…」
ポロポロと、涙が溢れてきた。
朝くんと出会ってからの私は、本当に、泣き虫だ。でも、それでいい。
そんな自分だからこそ、彼は好いてくれた。だから、自分を少しでも、好きになれた。