まどろみ3秒前
「なんでこんなに怖いかなぁ…」
私は、仰向けになりながら涙を手で必死に拭っていた。拭っても拭っても、視界がぼやけて、涙で満たされていく。
「この目を閉じたら、世界から私は消えてなくなって、いつか忘れられて。もう一生、朝くんと、会えなくなるかもしれないね…」
そうだった。私は、怖かった。
「俺はちゃんと生きて、最期には、一緒に死にたい。今は、その夢に変わった。…だから、俺は、翠さんを待ってるんだよ……?」
「うん…」
「先には死なせない。置いていかないから」
眠たい、ああ、眠たいよ…
猛烈な眠気に襲われる。瞼が鉛のように重くなる。目を瞑ってしまえば、私は間違いなく、眠りに落ちる。
「ずっと、溺れてるみたいで、ずっと、まどろみの中にいるみたいだった。笑うしかなくて、感情が消えていって、なんとなく死にたくなって……でも、」
この雨が止んでしまっても。
どんなに辛くて息苦しい世界でも。
私は、何度だって言いたい。
「私は、朝も夜もこの世界も大好き」
涙が溢れる。ああ、朝くんの顔が見えない。
全部、どうでもよくない。一瞬一瞬が、大切で尊いものだ。愛を、知ってしまった。本当に、最悪だ、全部、朝くんのせいで…