まどろみ3秒前
「…朝くんのことが、好きです……」
まどろみ3秒前
私は、初めて、愛を伝えた。
3
カウントダウンが始まる。
終わってしまう。終わってしまう前に。
「5年眠るかもしんないのになに言ってんだろう私は。全然、忘れていいから。言ってみたかっただけ。ごめんごめん」
1秒、また時間が過ぎていく。
2
震えてしまいそうになる体に酸素を巡らせるために、ゆっくりと、浅い呼吸をする。
「でも、最後にさ、…抜け駆けさせてよ、」
私は、本当に最低で、情けない醜い奴だ。
自分勝手で。
他の人にとられてしまうなら、私のことが好きじゃないなら、これは抜け駆けになる。
でも、許してほしいな。
ごめんなさい。
私は、朝くんの顔に唇を近付けていく。
幸い、視界がぼやけて朝くんの顔が見えずに済んだ。
「えっ」
まどろみ2秒前、彼からぐっと私に近づいてきた。今までとは違う。
それくらい近くて、近い。ぼやける視界の中には、彼だけがいた。
1
静かに、ただ、静かだった。
触れただけ。一瞬だけ。
それでも、2人には、十分すぎて。最後の瞬きには、顔を赤らめている彼だけがいた。
生々しい…と気持ち悪いイメージしかなかったけれど、そんなんじゃなかった。
幸せだ。どこか幸せに思えた。
「また、朝陽、見、よう…?」
返答は、もう聞こえなかった。
でも、多分、こう言ったんだよね。
「当たり前だから」
そう言って、多分、こう言っていた。
「おやすみ、…翠」
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