まどろみ3秒前

sleep 15 約束。


【said ?】



まどろみとは、少しねむること。うとうとしたり、そんな表現にはまどろむが使われる。


彼女は、そんな風に眠っていた。

まるで、浅い眠りのように。

3年5年眠るようには、どうしても見えない。


彼女が眠っている姿は、初めて見たかもしれない。いや見たことはあるけれど、あれは気絶していた時だった。あーそんなこともあったな、なんて遥か昔のように感じる。


体が僅かに上下に揺れている。瞼は、微動だに開かず動かない。まだ頬には涙が残っていた。拭ってやろうかと考えたけど、やめた。

彼女は、どこか笑みを残して眠っている。今さっき喋ってたのに、なんて寂しくなる。


綺麗な、寝顔。

本当に眠り姫みたいな寝顔に見惚れる。

何度俺を惚れさせたら、彼女の気は済むんだろうな。彼女の全部が、俺の好きになる。


目の下には深いくまがあり、茶色い髪がぼさっとベッドに広がっている。

それ染めてんの?と聞いてみたら、「染めてない地毛です」と彼女は怒りを隠すように下手くそな笑い方で笑ってた。

あれ、めちゃくちゃ可愛かったな…


そっと掛け布団をかけてやった。

声をかけたり、肩を揺らしたりはしない。


「…約束、守るから」


聞こえないよう、小さく言った。


「あっ」


雨は、止んでいた。

ポツ、ポツと窓に残った雨粒が落ちている―








< 352 / 426 >

この作品をシェア

pagetop