まどろみ3秒前
「朝だって色々あるもんな、悪かった」
「…夕、なんでそんなに」
こんなにすぐに、怒る人だったっけ。もう、何ヵ月も会っていなさすぎて、どんな人だったのかも、記憶が薄れてしまってきてる。
「フラれてんだよ、翠に」
しばらくフリーズしていた俺は「は?」と驚きの声が漏れる。彼女の方に目を向ける。
「夕が告白?したってこと?えっ?」
「告白っていうか…その…気持ちを…、そしたら、ありがとって言われて終わって…」
夕の横顔は、真面目で、それでもちょっとだけ頬を赤くしている。そんな彼の顔を見て、堪えていた笑いが溢れてきてしまった。
「なに笑ってんだよ殺す。てか俺、お前のこと嫌いなんだった」
「いや…っそんな告白通るわけないのに」
「は、うるさい。キモいから失せろ」
なんだか、久しぶりに笑った気がする。俺もあの時の彼女のように、もう全部どうでもいいって、最近は思えてきてしまってたから。
夕も何故か、笑う俺を見て笑った。何10年も見てきた笑顔は、依然として変わらない。
「だから、」夕は続ける。
「朝には翠のこと、大切にしてほしい。…俺だって、翠に早く会いたい。知らなくて病室には来るの遅れてこんなこと言えないけど、絶対、翠が起きた時には、」
「わかってる」
「幸せにしてほしい」
夕は俺の肩に手を置いた。夕がもし、彼女のことをまだ諦めていないならそれはもう残念。…だって、彼女はもう俺の…