まどろみ3秒前

「じゃあ今から、一緒に行く?」

「え、あ、いいの?!」


嬉しそうに胸の前で手をグーにしてガッツポーズする柚に、「なにしてんの」と真顔で聞いたせいで、柚はやっぱり顔を赤くしてた。






 


今日は、嫌なほどに空が晴れている。桜も舞い落ちて、卒業式らしい天気であった。でも、俺は、雨の方が好きになったから。


「ねぇ、今までの彼女の人数教えて?10は余裕で越えてるっしょ??」


色々と地獄だった。こいつを連れてきたことを、ちょっとだけ後悔した。

長い道のりに思えた。堂々と隣で口紅を塗り直したり髪を整えたりとしてきて、ほんと、居ずらい。

それに、歩く道、電車に揺られる間も、ずっと、恋愛の話ばかりしてきた。彼女以外、俺にはどうだっていいんだけど。


「どうでもいいんだけど、さっきから」

「ええっー?だって、あたしまだ夜野くんのこと好きだもん?あの返事待ってるし?今日で会うの最後なら、色々喋っときたいのー!」


ぎゅっと距離を詰めてくる柚からさーっと離れる。まるでその時、なめくじを見るかのような目で見てしまったことは反省したけど。
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