まどろみ3秒前

「ちょ、何して…」

「最後に、俺に足掻かせて下さい」


皆が俺を注目する中、後ろの、ピ…ピ、ピ…と音が段々と遅く、弱くなっていく。

やばいもまずい、も何一つ言わず、医者は、はっとした顔で固まっていた。


「最後です。息を引き取るまで見守るくらいなら、出てってくれていいでしょ?どうせ、こうしてても起きないんだから」


意味がわからないと思う。それでいい。死を前にこんなにも堂々としてる俺はおかしい。

黙っていた彼女の母親は、俺に近付く。


「起こしてくれる…?翠を……」


周りの人も、堪えきれないように泣いていた。卒業式だったろうに、彼女と同じ制服だった人達だって沢山いる。

彼女は、十分すぎるくらいに、大切にされていたんだ。

笑って繕ってばかりで、死んだ目をしていた彼女は、自信がなかっただけ。自分を諦めてた。…それでも、愛されてる。ただ、近くにいる大切な人に気付けてないだけだった。


「っ起こせるんですか?姉ちゃんを」


弟さんに、俺は、深く頷いた。


「俺が、運命変えてやりますんで」


何度も何度も夕は頷いて、何も言わずに病室を出た。そのまま、1人、また1人と病室から出ていく。最後に残ったのは、医者だった。
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