まどろみ3秒前

でも、俺は違う。

彼女が消えたその衝撃は、明日の俺の太陽という生きる存在を、消し去るんだ。

名前を呼んだきり、話しかけようとするも声がでない。喉に何かが詰まったように。

その理由は、わかりきってる。どうせ、あの約束をしてしまったから。

俺はそれをずっと、守ってきたから。約束してって彼女の顔が、嫌なほど、鮮明に焼き付いてるから。


―ピっ……ピー……


音が遅くなっていく度に、頭痛も増す。


目を閉じる相手に話しかけるのは、どうしてこんなに、怖いものなんだろう…?

どうしたらいい?


―「眠る私を、起こさないこと」


約束、破ってもいい?


―俺のことを、好きになってから


その時だった。頭に、誰かの声が鳴り響く。紛れもない、自分の声だった。


―私と一緒に、寝てください。


ああ、そうだった。

俺はゆっくりと言葉を決めて、口を開く。


「覚えてる?なんだかんだしてて忘れてたけど、あの、風が強かった時に」


上下に揺れる彼女の体が、段々と、静まっていくのがわかった。


「俺のこと好きになってくれたら、俺が起こしてあげる、みたいな?バカみたいに呑気に言ったの、覚えてる?覚えてないか」


思い出して、思わずふっと口が緩む。

今考えたら、あんなに呑気にカッコつけて、俺はなに言ってんだろう、なんて思う。
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