まどろみ3秒前

「っ俺だって、あなたのことが好きですって……伝えればよかった……」


その瞳を忘れても、どれだけ時間が経っても、色褪せないものが世界には溢れている。

溢れんばかりの涙が溢れて、頬を通りすぎていく。下に落ちても拭わずに、ただ、雨の中、愛を伝えていた。


雨の音が弱まっていく。


「あ、雨が…」


止んでしまう。止んでしまう前に……



目を瞑る彼女に、こんなに話しかけて意味はあるのか。それでも、足掻くんだ。足掻いて足掻いて、水の泡にでも消えたらいい。

そう、自信を持って言えたから。


「くま深いとこも、優しいけど不器用で、ほんとは頑張り屋で、笑って繕ってばっかなとこも…すぐ死にたいとか言う癖も……」


手をぎゅっと握りしめる。


「愛してる…」


その時、彼女の瞼が、ぴくりとする。

今、動いた―?

起きる。絶対に、目を開いてくれる。


「生きる意味なんて、空見たいとか雨が好きとか、死にたくないからとか。そんな、単純で、しょうもないものでいい…」


溺れてしまうどうしようもない彼女を、俺が、救い出してやる。


「自分は起きなくていい存在、自分はいなくても周りの人は幸せ、何のためにここにいるのか、わからなくなる。俺だって、誤魔化してたけど、同じで………」


精神が安定しなくなって、人が憎く見える。昇る太陽に、苛つくようになった。


「後悔しないようにして、人に嫌われたら終わりだと思って。笑顔を作って、壊れるくらいに猫を被って、朝が来るのが怖くなった」


夜を好んで、朝を憎んでいた。


「気付いたら、重度の不眠症になってた」


眠れなくて、眠り方を忘れて。

何もかもどうでもよくなって、イライラして、どうしようもない心に満たされなくて。

人を傷つけた。今にも残る、深い傷を。


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