まどろみ3秒前
どうしてだろう。彼の瞳に映る私だけは、本当に、綺麗に見えた。情けなくても、一瞬一瞬を生きていれば、それでいいと思えた。
雨の音がする。窓の先のその雨は、どこかスローモーションに降り落ちていく。
夜だった。外は、真っ暗闇に包まれていた。
腕に全っ集中し、上半身を起き上がらせる。
全身に痛みが走った。頭が痛い。吐き気だってする。喉が痛くて息苦しい。胸が心臓が、身体中が痛くてたまらない…、
それでも私は、あなたなことを覚えていた。
「っおはよう、あさくん」
咳き込むことはなく、声が出せた。変わらない私の声は、低く、どこか寝起き声だった。
身体中の水分全部なくなるんじゃないかって心配するくらいに、朝くんは泣いていた。
声も出さず、ただ、静かに。雨の音が病室に響き渡っていた。
何も言わず、彼は、ぎゅっと私を抱き締める。
どうして、こんなに温かんだろう。どこか冷たい私の体は、すぐに、温かくなった。
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「起きました」
病室の扉を開けて、廊下に言い放つ。
意味がわからず、ただ、ぼーっと見つめる。
何を、してるんだろう。廊下に、誰かいる?
きょとんとする私に振り返って、ふふ、といたずらっぽく彼は笑った。
その後の私は、抱きつかれ放題だった。