まどろみ3秒前
まずは病室に入ってきたお母さんに、思い切り抱き締められる。体が引きちぎれるんじゃないかってくらいに、強く、それでも優しさが溢れ出していた。
お母さん、小鳥、そして何故か、柚もいた。
まだ寝ぼけていた私は、柚からの強い香水の匂いで、完全に覚醒することに成功した。
それから、どんだけ出てくるんだと驚くほどに、何人もの人が狭い病室に入ってくる。
驚く暇もなく、順番に、私はハグを受ける。
1人、1人と、顔見知りの人ばかりで。
彼らは、目を赤に染めて、泣いていた。
終いには何故か、全く話さないクラスの男子ともハグをして。それは、よくわからなかったけど。
私がいなくても、。そんなことはどうだっていい。私がいるから。私は、ここにいたい。このままでいい、いつか必ず変われるから。
「なんで…心臓は止まったはずなのに…?なんでこんなに記憶が戻ったりして…?」
看護婦さん達は、胸を撫で下ろしたような表情をしていたが、ただ1人、医者は呆然と立ち尽くしていた。
「起きれた?まさか、本当に自分の意思以外に起きれるなんて……こんな奇跡が…」
「あの、奇跡だけど、奇跡じゃないですよ」
私は、一度彼の方に目を向けてから言った。彼は、泣き止んだ目を最後に拭いながら、ふっと笑っていた。