まどろみ3秒前
「体は、どうなの」
言いながら朝くんは、ベッドに座る。
落ち着いてきて改めて見るが、少し髪型が変わっている。なんだか、新鮮だった。
私は、酷くなってきた雨の音を聞いていた。彼も同じ音を、聞いているのだろうか。
「うん、今は、マシになってきた」
咳き込むこともなく、しっかり呼吸ができるし話せる。身体中の痛みもひいてきた。
本当に、私自身も驚いている。
検査は受けたが、体に多少痛みがあるだろうとだけだった。不思議な病気だ、ほんと。
胸に手を当てる。ドクドク、と心臓は規則的なリズムを保って鳴っている。
この心臓は、1度止まったらしい。
それなのに、また動くなんて。
1度死んだのにほぼ1年寝たのに、入院期間はたったの3日でいいとまで言われた。
「約束、破ってくれたでしょ」
彼は、じっと私を見つめる。それでもやっぱり、私からそらしてしまう。だけどそれは、なんだか恥ずかしかっただけ、である。
「…いや別に、いいんだけどね。てか破らなかったら、今ごろこの体も死んでたから。破ってくれたんだなぁと、思いまして」
「いや…去年のことなのに約束のことよく覚えてんなぁって思って…驚いてる」
起きたら朝くんのことだって忘れていたくらいだ。そう思うのは無理もない。でも、また驚くほどに、私には記憶があった。