まどろみ3秒前
いつも落ちてくる唇が今日は近付いてきたこと、すぐ隣に声がして息を感じたこと…
そこで、鈍感な私はようやく気付いた。
「な、なんで同じベッドに…!!!」
目が覚醒したように、完全に目覚められた。
私達の部屋には、2つのベッドが少しの間隔を開けて並んでいる。
同居するにあたって、約束を何個かした。
その中のひとつを、彼は破ってきたのだ。
『互いのベッドには侵入しないこと』
いつだって、眠る時や私を起こす時だってベッドには入らない約束で成り立ってたのに…
「それはだめ、約束でしょ…?」
壁に貼ってある約束事を精一杯に指差しながら言うと、彼は、おかしそうに笑ってくる。
「翠が、こっちのベッドに来たんでしょ?」
えっ?ぼやけた目を擦ってよく見渡すと、私のベッドの方には、誰もいない、しわくちゃになったシーツだけがあった。
私は、朝くんの方のベッドで眠っていたらしい。
私がここに移動を?いつ?は?
「なーんか、朝起きたら隣にいたから。俺と寝れなくてそんなに寂しかったのかなって」
「はぁ…?うわぁ…全然記憶ないし…寝相のせい…?ベッド間隔開いてんのに…ごめんなさい…ほんと…ああ最悪……」
動揺しすぎ、と彼は笑う。
夜中に寝惚けたままベッドに潜り込むとか…、確かに昨日の夜は寝るのが遅くなってしまって、どこか寝惚けてたのはあるけど。
同居する前なんて、自分の寝言や寝相の悪さに全く気付かなかったのに。